MENU

代表取締役  辻  良

ブリ養殖場が遊び場でした

 1967年1月、三重県の小さな漁師町南伊勢町(南島町)奈屋浦に生まれ、小学校1年生の時から父親が営む養殖場(ブリ養殖イケス)が私の遊び場でした。魚釣り、素潜りでの魚介類の採取に明け暮れる毎日。

 小学校6年生の夏、3~5kgのクロダイを一人で27尾釣上げ、魚市場で話題になりました。また、早朝(午前4時頃)父の仕掛けた刺し網に30kgを超えるクエが掛かっているのを見たとき、「海にはこんなに大きな魚がいるのか!」と感動したことを覚えています。それ以来、“海"、“魚"、“漁業"に対する興味が深まっていきました。

チームワークと信頼関係を学んだ大学時代

 1985年、東海大学海洋学部に進学するため、高校卒業まで18年間過ごした町を初めて離れることになりました。
 大学生活では、年一回の海洋実習が特に楽しみでした。夏休み中に行われるこの実習は、大学所有の実習船で小笠原諸島へ一週間航海し、各班に分かれ昼間は海洋観測、プランクトン採集や水質、海底の地質を調査し、夜間は停泊し釣りをするのです。サンマやイカの切り身を餌にフエダイやベラの仲間、時にはサメや大型の回遊魚も釣れるのです。

 実習中、同僚のほとんどが船酔いに苦しんでいましたが、私だけは平気でした。「お前は本当に漁師だなあ」とよく言われました。
 大学1年の11月、オートバイで交通事故に遭い、右膝複雑骨折で3ケ月間の入院、退院後1年間のリハビリ生活を経験しました。そうなると、講義に出席できませんから単位を取ることが出来なくなってしまいます。留年を覚悟していました。

 しかし、私の友人は講義の録音テープやノートのコピーを、毎日私の病室に届けてくれたのです。また、正月も帰郷せず私に付き添ってくれました。彼の励ましのおかげで私は留年することなく進級することができたのです。その時ほど“友の有難さ"を実感したことはありませんでした。海洋実習と交通事故体験から“チームワーク"と“信頼関係"を築くことの大切さを学びました。

実際に漁業に携わってみなければ本質は理解できない

 1989年、なんとか大学を卒業し、過疎化に悩む漁村の漁業者のためになる仕事に就きたいという想いから、漁業団体の職員として魚介類の種苗生産技術や出荷販売等を学びました。
 しかし、ある時から「本当に漁業者のためになっているのか?」という疑問が沸々と湧き上がり、「実際に自分が漁業に携わってみなければ本当のことは解らないのではないのか」と考え、翌年同団体を退職し、三重県に戻って地元の漁業会社に入社させて頂きました。

 この会社は、大中型まき網漁業と定置網漁業を主事業としており、そこで所有船舶(総隻数54隻)の修繕、新造船の建造に関わる監督、労務・資材管理を担当させてもらいました。やがて自然と漁船に興味が湧き、「世界で一隻だけのオリジナルの船を造りたい」と思うようになり、独学でCADを学び設計図を描くようになりました。

 2007年までに22隻の新造船を設計、監督を行うことができました。(2016年6月現在:29隻)
 2001年6月、同社創業者の一声で“究極の養殖"とされていたクロマグロ養殖に突然着手することになり、その責任者を兼務することになりました。
 2006年、5年間の試行錯誤の末、独自のマグロ養殖システムを確立し、2007年7月に東京で開催されたジャパン・インターナショナル・シーフードショーの出展がきっかけで各テレビ局での放送や、新聞、雑誌等にも掲載されました。

オーシャン・トラストの誕生へ

 同漁業会社での18年間はあっという間でしたが、この間、夢を持った多くの人たちに出会い、学んだことは私にとってかけがえのない財産となりました。また、「養殖魚のイメージを良くしたい」、「本物の美味しさを伝えたい」、「漁師に漁業への可能性を見出してほしい」という想いが強くなっていきました。そして、漁業者自らが情報を発信し行動しなければ何も始まらないということに気がついたのです。今、“成功チーム"を作ることの大切さをあらためて実感しています。必要とされる存在になるために自分を磨いていれば、必ず仲間が集まってきます。「一人ひとりの力は小さくても、“信頼"できる仲間が集まれば相乗効果が生まれ、大きなエネルギーとなって夢が実現する。」そう信じています。
 多くの人々に漁業の大切さ、楽しさを知ってもらいたい。その想いから2007年9月に独立を決意しました。

 近年、日本の漁業は衰退の一途をたどっており、大半の漁業経営が厳しい状況だと言われています。
 日本の消費者は、魚は肉に比べ割高で調理や後処理が面倒だと思っています。一方、漁業者は魚価安、コスト高で採算割れとなり経営を圧迫しています。現在の流通と販売方法に問題があるのですが、それをどうのこうの言う前に漁業者自身が、“こだわり"と“自信"をもって取り組んでいかなければ現状を変えることはできないのではないでしょうか。
 「どうすれば買っていただけるか」を真剣に考えていけば答えが出てくるはずです!
 そのお手伝いをしたい。私もまだまだ勉強中の身ですが、漁業関係の皆様に信頼される漁業診断士、オーシャン・マイスターを目指しています。
 私と一緒に漁業を豊かな魅力ある職業にしていきましょう。
 漁業診断士、オーシャン・トラストにご期待下さい。

株式会社 オーシャン・トラスト

代表取締役 辻 良